この授業は、栄養学の基礎知識をもとに、栄養素の吸収?代謝に関わる詳細や新しい話題、今日の栄養素の摂取状況、これに関わる諸問題を学ぶことを目的としています。

授業では、栄養学的な機構に関わる人体の構造の基本を理解した上で、5大栄養素(タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)の構造や吸収の仕組み、体内での役割を学びます。

授業内容

この授業は、3年生以上を対象として開講され、受講生のほとんどが生命機能学科の学生です。昨年度までは、亚博足彩感染症拡大防止のためオンラインで開講されていましたが、今年度から対面で行われています。今回は、第13回目の授業を取材しました。

授業開始のチャイムが鳴るまでに、学生らが続々と教室に集まって来ました。学生の元気な声や笑い声。コロナ禍により昨年度までは実現し辛かった光景を見ることができました。学生らは、着席するとノートパソコンを開いて準備します。この授業は、Moodle(e-Learningを支援する学習管理システム)を利用して行われ、学生らは当日の資料を事前に確認することができ、教科書とともに事前に予習して授業に臨みます。また、毎回、授業の最後に行われる小テストもこのMoodleを利用して行われます。

今回取材した第13回目の授業は、5大栄養素(タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)のひとつである「ミネラル」についての講義でした。ミネラルは、体内でつくることができないため、食品等から摂取する必要がある栄養素です。このミネラルについては、3回に分けて授業が行われ、前回の授業までに、1日の推奨量や目安量が約100mg以上のミネラルである「カルシウム」や「ナトリウム」等の構造や体内への吸収の仕組み、欠乏や過剰摂取の恐れについての講義を終えていました。今回の授業では、1日の推奨量や目安量が100㎎未満の微量ミネラルである「亜鉛」や「コバルト」等についての講義が行われました。岸田先生から、「亜鉛」は、健康な人の食生活おいては欠乏の恐れはないが、発展途上国での精製度の低い穀物類を例に挙げ、フィチン酸が多く含まれる食品は亜鉛の吸収を阻害すると説明がありました。続いて、コバルト、ヨード、セレン、フッ素について、欠乏の恐れの有無、生命を維持する上での重要な役割について説明がなされました。各ミネラルの説明の後は、毎回、人体の無機元素含有量を確認し、元素周期表を見て、その構造を把握します。これを繰り返し確認することで、それぞれのミネラルが人体で重要な役割を果たしていることを再確認していました。

 学生らは、終始、静かに真剣な眼差しで岸田先生の丁寧な説明に聴き入っていました。Moodle上には、授業の要点や伝達事項に加えて、岸田先生から学生へ励ましのメッセージもあり、岸田先生のお人柄を感じます。受講対象が3年生からということもあり、卒業後の就職や大学院への進学を視野に入れて受講している学生も多くいるかと思います。受講した学生らが、この授業で食の機能性解明と生物資源の有効利用に関する専門知識と技術を修得し、「食品」をはじめとして、化学、医薬等の分野において、生活の質の向上や健康寿命の延伸に貢献できる人材になることを期待しています。

教員からのコメント

栄養学というと、どの栄養素がどんな食品にどれくらい入っている、とかどの栄養素は一日どれくらい摂取する必要があって、それにはどんな食品をどれだけ食べたらいい、という勉強をするイメージがあると思います。これもとても大事なことで、そういうお話も少ししていますが、本講義の中心は、栄養素が体の中でどんなことをしているから必要なのか、考えてもらうことにあります。例えば水溶性ビタミンの多くは、酵素と一体となって、あるいは酵素と密接に作用することにより我々の体の中で必要な物質を作ったり変化させたりして生命活動の調節をしています。この仕組みを理解することはとても難しく、実は今日でもわかっていないことも沢山あるのですが、だからこそ栄養学はとても面白く魅力的な研究領域なのです。別の講義基礎栄養科学で栄養素に纏わる体の仕組みと栄養素の一つタンパク質や炭水化物について学んでもらった後に、本講義では脂質、ビタミン、タンパク質について上述のようなお話をしています。近年インターネットやAIの普及で勉強の在り方もおおきな変換期に来ています。しかし、栄養素が働く仕組みのストーリーを学ぶことの重要性は今後も変わらないように感じています。ストーリーにそった必要最小限の重要なキーワードだけ覚えてもらって、あとは自分なりにストーリーを獲得してもらえるよう、出来るだけ基礎的なところから積み上げながら講義をするよう心がけています。

受講学生のコメント

農学部生命機能学科応用生命化学コース 3年生 天野 拓也 さん

この講義では、食品栄養学という名前の通り、食品に含まれる特に脂質やビタミンなどの栄養素について学びます。生活の中で何気なく食べている食べ物がどうやって体内に取り込まれて、どのような効果を発揮するのか、例えば「ビタミンD」を多く含むきのこを食べると「骨の健康を維持する」、簡単に言うと「骨を強くする!」など、様々な栄養素にはそれぞれの効果があります。それらを理解することを基礎として、新たな効果の発見や、新たな食品の開発などに活用することが目標となります。
身近な食品の栄養素と体の関係に興味がある方は是非、受講してみて下さい!

農学部生命機能学科健康機能栄養科学特別コース 3年生 二瓶 陸人 さん

食品中に含まれる栄養素は、私たちが生きるために必要不可欠なものであり、不足すると様々な欠乏症を引き起こします。この授業では、私たちが日常から摂取している栄養成分が生体内でどのように吸収?代謝されているのかを細胞レベルで学ぶことが出来ます。栄養素の代謝には様々な器官が関わっており、理解するのが少し難しく感じる部分もありますが、実際には目に見えない物質が私たちの体内でどういった働きをしているのかを知ることが出来る点がこの授業の魅力です。栄養素が体に及ぼす効果は一般的によく知られていますが、その効果がどういった過程によって得られるのかを知ることで、研究に活かせる知識がついたことはもちろん、普段の食事の見え方もちょっと変わったように感じました。

左から天野さんと二瓶さん